白屋書房Blog

組版・縦書きサイト「白屋書房」のブログです

Introduction

まだコンテンツもろくにない状態ですが、年の瀬だし来年の抱負なども兼ねてまえがき的なものを書いておこうと思います。サイトの記事とかぶってるところもあるんで、読む意味はあんまりないです。

前提:当サイトは文庫本作成エンジン「威沙」を応援しています。

えー時々なんか技術っぽいことを呟いたりもしますが、基本的に筆者はプログラミングができません。一応勉強はしましたが商業的・学術的に使用したことは一切ありません。多分これからもないと思います。
その上で(ド素人という立場の上で)、現時点で最速で縦組みの小説本を作ろうと思ったら、とにかく威沙がおすすめです。「無料における最強の組版ソフトウェア」というキャッチフレーズの通り、ほんとに綺麗に柔軟に組めます。というわけでいくらステマの謗りを受けようとも、筆者は威沙と作者の風野旅人氏、サークル「Sylphid Software Systems」を全力で推していく所存です。

あとはやっぱデファクトスタンダードとしてのWordの地位は揺るがないと思います。プロプライエタリ(企業占有)とはいえMicrosoftが潰れるって事態はちょっと考えづらい。このサイトは徹底的にフリーソフトウェアを推していきますが、それでもLibreOfficeとかあるんだし。
だからWordその他ワープロソフトで頑張って理想に近く出力できたら、少なくともアマチュアレベルでは十分なんだと思います。

さてそういったスタンスに立った上で、以下組版をめぐる展望です。

ものすごく遠大な夢を語るならば、「日本語をパブリッシュする際に使う方法の標準化を図りたい」、というのがあります。別に言語学的な使命とかじゃなくて、単純に今自分が迷ってるので。プレーンテキスト以上のことをしようとした時、どの記法で保存しときゃいいのか分からないんです。
多分iPhoneが登場してなかったらここまで悩むようなことでもなかったと思います。しかし時代はクロスプラットフォーム。「全ての端末で読めて書ける」のは、少なくとも私にとっては大前提です。

日本語の、特に散文・文芸作品においては「とりあえずこの形式で書いとけばどこのサービスでも使い回せる」って形式がまだ未整備だと思います。
今のところ青空文庫形式がそれに一番近いでしょう。将来的にも非営利の団体なので潰れるということもなく持続性がありますし、そもそも内容からしてオープンソースの理念に立ってるわけですし、文法も全て日本語で非常に直感的です(私はあの注記形式がけっこう好きです)。
だから日本語圏全体が青空形式の方向で固まっていくなら、それを微力ながら応援していきたいです。もっと技術力がついたらaozorahackにも参加したい。

で、そもそも青空文庫だってWWW上でテキストを公開している場所なんだし、公式組版も青空形式のtxt文書をHTMLファイルに変換するというものなんだから、究極的には全部HTMLに収束していくんならそれはそれで全然自然なことだなと。その場合CSSだけを頑張ればいいんだし。意味のマークアップ部分は共通だからガラパゴスにならずに済むし。(日本語に限らず、言語ごとのスタイリングのローカルルールを定める必要はあるんでしょうけど)
だいたいpublishすると言ったって、広く自分の文書を公開したいなら紙に刷って頒布するかWWW上に公開するかしかありゃしません。つまり行き着くところはPDFかHTMLの二択。
CSS組版という動きも生まれてきているようですし、それが広まったらもうHTMLで書きゃいいじゃん。WYSIWYGエディタなんてそれこそ山ほどあるので私のやることはもはやありません。一億総組版社会がやってくるぞ。

さて、こういうことを考えた上で何故今更TeXなのか、と言えば、要は現時点でそこまで強力かつ柔軟に組める共通言語がこれしかないからです。身も蓋もねえ……。
青空形式は普及してるわりにユーザビリティがあまり良くない。シンタックスハイライトと入力支援ができるエディタは私の知る限りMeryしかないです(Emacs?知らない子ですね)。しかも強烈にシンプルさを志向するMeryだからこそできた、みたいな面がある。Atomの言語パッケージ作りたかったけどすぐ投げた。多分私以外にも投げた人がいる。なんだよcoffeeScriptって……。

TeXスマホでは処理できないけど、少なくとも書く時はプレーンテキストで済みます。そもそも組版のための言語なんだし40年の歴史があるんだし、ここはその遺産に乗っておこうと。
あとは極めて個人的な話で、単に私がwannabeだからです。(ハッカー的な意味でも、小説家的な意味でも)
なんかいろんなコマンドを駆使して暗号のようなソースファイルからこんなに綺麗なゲラができた!わーかっけー!みたいなことがやりたくて日々TeXの沼を這いずり回っています。老後の趣味みたいなもんです。
趣味なので正しいTeXの動かし方を追求するつもりはあんまりないです。よう分からんけどこうやったらこんなの出てきた、的な感じで、趣味というかもはや呪術です。

どうせ趣味なんだから、というわけで、短期的な目標として「できるだけ生原稿に近い形でTeX文書を書く」というのを掲げてみました。文芸的プログラミングの理念には真っ向から反対するスタンスだけど。
組版をめぐるあれこれについては多分もう100人くらいが言ってることを繰り返してるだけなので、当サイトが貢献できることがあるとすれば「TeXソースを素人にとって扱いやすいものにする」ことぐらいです。

幸い今は素人でも調べさえすればどうにか格好がつく時代です。オープンで誰でもできる組版の時代が来るまでは、とりあえずWebの片隅で場繋ぎをやっていきたいと思います。

びっくりするくらい長くなった。最後にちょっと自己紹介など。

少しでも共感して下さったかた、あるいは全然共感できなかったかたも、これからいろいろな形で議論を交わせたら嬉しく思います。